1年前の撮影現場で、一人の新人女優が死んだ。彼女は殺されたのか?女優の死をめぐって繰り広げられる監督と女優たちの物語。人間の内部で無意識に動く感情を説明的なせりふを排し、物語の核を隠しながらもリアルに生々しく描き出すことに定評のある岩松了の新作。物語は、2020年に上演された作品で、ある映画監督の妻と、その監督の愛人であった女優が、時を経て共感とも友情ともとれる感情を抱いていく様を描いた『そして春になった』を下敷きに、今作では、映画製作の現場で繰り広げる、一年前の新人女優の死をめぐる映画監督と女優たちの愛憎と葛藤を、悲喜劇として描く。監督を眞島秀和、女優ジュンを吉高由里子が演じる。
新作映画のクランインのため、世間から隔絶された場所でリハーサルを行っている監督と女優たち。1年前にクランクインするはずだったこの映画は、一人の新人女優・堀美晴の突然の死で延期されていたのだった。堀美晴の死は事故だったのか、あるいは誰かに殺されたのか?真相はわからないままだった。
監督の並之木顕之(眞島秀和)は、堀美晴の死=スキャンダルを乗り越え、何とかこの映画を成功させるべく、準備を進めようとするが、主演女優の羽田ゆずる(秋山菜津子)をはじめ、ベテラン女優の鈴木弥生(伊勢志摩)、若手女優の宮城真里(石橋穂乃香)、マネージャーの山根たず子(富山えり子)、女たちのそれぞれの思惑と、遅々として進まない進行状況に、悩まされている。
そんな中、新たにこの作品に参加して来た女優、ジュン(吉高由里子)が徐々に存在感を増してゆき、並之木もだんだんと彼女に惹かれてゆく。
そして、ジュンの存在感が増すごとに、堀美晴の死が映画の撮影現場に暗い影を落とし、やがて暴かれた真実によって事態は大きくうねり始める―――。
(2022年10月7日~30日 東京・本多劇場ほか)